大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 6月14日 ガノンドロフ(4)

 

 

 

 

 日々の恐怖 6月14日 ガノンドロフ(4)

 

 

 

 

 高校を卒業してからは実家を出て、東京、大阪、名古屋と都市部に住んでいた。

成人式の時に帰省して、些細なことで父親と喧嘩して以来、実家には戻っていなかった。

 去年、結婚したからと久しぶりに帰省した。

当時はガノンドロフみたいに怖かった父親も、すっかり禿頭になり、小さくなって、穏やかになって

うちの奥さんに

 

 こんな男のところに来てくれてありがとうね

 

西田敏行みたいに泣いていた。

時がたつのは本当に早い。

母親もドラクエくさったしたいみたいにヨボヨボになっていた。

もっと頻繁に帰省しないとなと思った。

 

 2か月前、夢を見た。

当時の実家のリビングに俺はいた。

身体は今のまま。

夢を見ているという自覚があった。

玄関のチャイムが鳴る。

擦りガラスの向こうには人影があった。

背格好でわかる。

ドアの前にいるのは父親だ。

俺はドアを開けなかった。

この話を思い出したからだ。

2階の自分の部屋に逃げ込んだ。

チャイムは何度か鳴っていたが、しばらくすると鳴り止み、目が覚める。

 すぐに母親に電話をした。

父親は今、がんを患っているらしい。

帰省したころにはすでに病院で発覚していたらしい。

心配をかけるから子供達には言うなと言われていたらしい。

年齢的にも、転移する可能性があるから頻繁に通院して経過を見ないといけないそうだ。

 あれから何度か同じ夢を見る。

決意表明も込めて、ここに書いておく。

これからも絶対にドアは開けない。