大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

あなたの知らない世界にようこそ

E,霧の狐道

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潮騒の夏 その153

潮騒の夏 その153 それで、洋子ちゃんは話を続けた。 「 やまてつのこと、本当よ! あそこ、もともと、“民宿やまふじ”だったんだ。 やまふじの大女将のご主人、板前さんだったんだけど、病気で亡くなってしまって、板前さんが居なくなってしまって困って…

霧の狐道274

俺は、妹のニコニコした顔を見ながら思った。 “ 俺は、完全に失敗した。 妹に期待したのが間違っていた。 こんなものを見たら、あの女の子は一緒に遊ぼうなんて言い出すんじゃ ないか・・・。 タダでさえ遊びたがっていたのに・・・。” 俺は、キティちゃんの…

霧の狐道273

俺は、沙織に言った。 「 これ、コックリさん?」 「 それは、表よ。 裏に、おまじないが書いてあるでしょ! こっちの方が、お守りなの。」 「 俺は、まともなお守りって言ったんだぞ!」 「 だって、キツネのお守りって言ってたじゃん。 友達にキツネのお守…

霧の狐道272

電話をして3時間ほどで、妹の沙織がやって来た。 沙織は、不服そうな顔をして俺に言った。 「 ここ、メッチャ遠い!」 「 ああ、ご苦労ご苦労。 はい、出して、出して。」 沙織はポケットから小さな赤い布袋を出して俺に渡した。 「 ほらっ!」 「 なんじゃ…

霧の狐道271

「 あ~、もう分かりました。 沙織様、どうかお守りを持って来て下さい。」 「 お願いしますは?」 「 あ、お願いします。」 「 布袋にキツネがポイントね。」 「 ああ。」 「 分かったわ。」 「 じゃ、よろしく!」 “ ガチャ!” 俺は急いで電話を切った。 …

霧の狐道270

「 沙織に電話したんだよっ! 親には言うなよ、カッコ悪いからな。 あのな、お守りを持って来てくれ。」 「 お守り?」 「 ああ、お守りだ。」 「 どうしたの?」 「 失くしてしまった。」 「 今まで、お守りなんて気休めだって言って、持ったこと無かったの…

霧の狐道269

俺はジタバタしながら、ナースステーションの前にある赤電話に行った。 そして、チャリンチャリンとお金を入れ、自宅に電話を掛ける。 “ トウルルルル、トウルルルル、トウルルルル・・・・。” 呼び出し音は鳴っているが、なかなか人が出ない。 「 遅いぞ、…

霧の狐道268

俺はヤッパリ山本爺を触らないでおこうと思った。 “ 苦しいんだろな・・・・・。 う~~~~ん、よし!” 俺は山本爺にお守りを貸してあげることに決めた。 盗って行ったとは思いたくない。 “ 貸してあげるけど、早めに返してネ!” 俺は盛り上がった布団に声…

霧の狐道267

俺は困った。 「 あっ!」 俺は思わず声を出して、その口を手で覆った。 “ 今の声、聞こえたかな・・・?” 俺は声を山本爺に聞かれたくなかった。 山本爺に動きは無い。 “ 山本爺が小物入れの前に立っていたんだ・・・・。” 俺は山本爺のベッドを見た。 “ 怪…

霧の狐道266

山本爺は膨れた布団の中でジッとしている。 眼の端には入院手続きの書類が見える。 “ ま、いいか・・・・。 取り敢えず、書類を書いてしまおう。” 俺は“よっこらしょ!”っとベッドに座り直した。 そして、ボールペンを取るため引き出しを開けた。 “ あれっ、…

霧の狐道265

その姿は扉の陰に一瞬で消えた。 車椅子はゴロゴロ進み、ナースステーションに到着した。 俺は井上さんから入院に関する書類を受け取り、軽く説明を受ける。 「 じゃ、これに必要事項を記入しておいてね!」 「 うん。」 相槌を打ち、受け取った書類を膝に乗…

霧の狐道264

お守り2 今日も午前中、主治医の狸小路の診察を受けた。 俺は看護婦の井上さんに車椅子を押されてタヌキの所に行った。 鎖骨固定帯の調整と足の湿布が主な治療だ。 治療をしながら、タヌキが言った。 「 昨日、夜に電話を掛けたんですけど、手術はダメだっ…

霧の狐道263

面会の終わった山本爺の小物入れの上には、大きな果物カゴが置いてあった。 俺は素直に、それがスゴイナァと思って言った。 「 う~ん、果物、いっぱいだ!!」 山本爺はチラッと俺を見ると、布団から片足を下ろして体を支え、左手を伸ばして、果物カゴから…

霧の狐道262

面会人は大学生風の男二人で、山本爺にノートを見せていた。 山本爺はベッドの布団から眼だけを出しながら、何かモゴモゴ言っている。 布団で口が隠れているから、山本爺の声はくぐもって聞き取れない。 大学生風の男二人のうちの一人が山本爺に言った。 「 …

霧の狐道261

俺は諦めて窓の正面を見る。 川の向こうの太い道には、多くの自動車が元気にせわしなく走っている。 “ あれと比べりゃ、駐車場の自動車は、しばしの休憩ってとこか・・・。 そうだよな、この敷地の外は普通の生活があるんだよな。 俺もどっちかと言うと休憩…

霧の狐道260

入院した次の日に、看護婦さんに病院の中を案内してもらったとき、玄関は一箇所で人の流れはそこに集約されると看護婦さんが言っていた。 怪しい人が入って来ないように、門衛さんと玄関の案内で眼を光らせていると言う話だった。 もっとも、案内されたとき…

霧の狐道259

俺は窓にオデコをくっ付けて、窓の真下を見ようとした。 でも、建物の真下は、窓を開けて乗り出さないと見えない。 ちょうど真下は見えなかったが、病院の建物に沿って遥か下に、建物に垂直に駐車場の白い線が付けてあり、その白い線の間に自動車が建物の方…

霧の狐道258

談話室の窓からは、暖かい日差しが差し込み足元を照らしている。 窓の外に眼を遣ると、遠くの山並みが見える。 背の高いマンションが山の中腹から裾まで段々と降りてきている。 “ 落ちて行ったって言ったよな・・・。” 俺は四角い窓に車椅子の車輪を転がして…

霧の狐道257

俺の疑問を他所に龍平の話は続いている。 「 そやろ・・・・。 ホンマ、あれ無かったらヤバかったかも知れんわ。 お、あ・・・、わい、いいこと思い付いた! 昨日、考えながら寝てしまったんやけど・・・。 わい、ちょっと行って来るわ。 また、後でな。」 …

霧の狐道256

龍平が、来なかったことを気にしていると思ったので俺は言った。 「 昨日、状況を聞いても、どうしていいか思いつかないし・・・・。 だから、仕方ないし、後はお互い寝るだけだよ。 それに、山本爺、朝、ちゃんと自分のベッドにいただろ。 山本爺、大丈夫だ…

霧の狐道255

「 誰か来た?」 「 うん、そうや。 エレベーターに近付いてみると、下から上に何かが上がって来るんや。 で、“これってヤバイぞ”って感じがしたんで、5階の談話室に大急ぎで飛び込 んで、扉の隙間からそっと覗いてたら・・・・。 誰やと思う?」 「 誰?」…

霧の狐道254

「 後ろの山本さんは・・・・?」 「 そう、それで黒い影の後ろにいた山本さんなんやけど・・。 柵の角まで行って、躊躇してる感じやったけど、結局、屋上の方に降りて来た わ。」 「 そうかァ。」 「 それで、山本さんは女の子と向かい合わせになって立って…

霧の狐道253

龍平と俺の目玉が、龍平の丸を挟んで向かい合う。 接近した顔のアップが目の前にある。 「 プッ!」 龍平が、俺の寄り眼に我慢出来ずに吹き出した。 「 勝った!」 「 何、すんねん!」 「 穴があったら、覗くのが人の常。」 「 で、寄り眼は何やねん?」 「…

霧の狐道252

他の患者さんが扉から入って来かけて立ち止まり、変な顔を一瞬した後、クルッと向きを変えて出て行った。 「 おまえなァ~、変なことをさせるなよなァ~。 人格、疑われるやろ~。」 「 勝手に踊ったのは、おまえだろ。」 「 そら、まあな・・・・。 それで…

霧の狐道251

俺はベッドから足を下ろしながら言った。 「 わかった、散歩に行こう。」 龍平はニヤッと笑って言った。 「 ああ、天気はいいぞ。」 俺は車椅子に乗り、龍平が車椅子の後ろを押して病室を出た。 俺と龍平は部屋を出るとき、山本爺の方を見ないようにしていた…

霧の狐道250

俺は山本爺の声の調子を聞いて思った。 “ あ、山本爺、結構、大丈夫なんだ・・・。 と言うことは、龍平も大丈夫ってことだな・・・。” しばらくして、ピッと言う音がして、看護婦さんが山本爺に言った。 「 あ、ちょっと熱があるね。 先生に言っとくわ。」 …

霧の狐道249

トイレで用を足しながら、俺は思った。 “ ここは病院なんだ。 誰もが、生きて退院出来るとは限らんのだ。” トイレを出ると、通路は静かで田中爺はもういなかった。 田中爺の体操は無事終了したようだ。 俺はトイレから病室に戻るとき、もう一度、遠くにある…

霧の狐道248

田中爺は、俺の視線が自分を通り越していることに気が付いて後ろを向いた。 そして、向こうを向いたまま言った。 「 ああ、一人、いってしもたんやな・・。」 「 いってしもたって・・・?」 「 ここは病院やで。 あれは、もう、ベッドが必要無くなったんや…

霧の狐道247

10月18日(日) 報告 “ 朝だ、あさだァ~よォ~、朝日がのぼォるゥ~♪” 次の日、俺は田中爺の例の歌声で眼が覚めた。 遅くまで起きていたから、かなり眠い。 俺は山本爺のベッドを見た。 ベッドは人の形に膨れている。 少し動いたような気がした。 “ あ…

霧の狐道246

看護婦さんがトイレの外から言った。 「 もう、出た?」 俺は、一応、形をつけた。 「 あ、いっぱい出た。」 「 じゃ、病室に帰って、寝るのよ。」 「 うん・・・。」 俺はごそごそとトイレから出る。 看護婦さんが車椅子の後ろに回り込みながら言った。 「 …